会社のたくましさやビジネスの強さというのは、日々の業務の中で改善を積み重ねていくことで培われていきます。
「kaizen」「カイゼン」という言葉は、世界で使われるビジネス用語です。
その語源は、日本を代表する企業「トヨタ自動車」にあります。
ご存じの方も多いと思いますが、トヨタ生産方式の強みは、現場作業者の知恵を集結し、ボトムアップで問題解決にあたることにあります。
小さな会社や店舗経営において、「トヨタ自動車のように改善を積み重ねるなんてできないよ」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
これからお伝えする、たった3つのポイントを押さえるだけで、あなたの会社やビジネスが強くたくましく成長していきます。
小さな会社の場合、改善活動に真剣に取り組んでいるのは社長だけです。
しかし実際のところ、社長ひとりのアイデアだけだと偏った視点になってしまいます。
また中小企業の社長は、実務的にやることも多く、目の前の作業に追われ、なかなか業務改善に手を付けられないという方も多いでしょう。
しかしそんな時、お客さんや取引先などと直接接している現場スタッフが改善提案をしてくれれば、良いアイデアが集まり、改善活動がぐんと加速するのではないかと思いませんか?
ここから「スタッフから改善提案をたくさん集める方法」と「改善提案を継続的に進めていく方法」についてお伝えしていきます。
ポイントその1:改善提案を義務化する
まず初めに取り組むことは、スタッフに1日に1個、または1週間に1個でも構いませんから、必ず改善提案の提出を義務化することです。
改善提案の出し方は、どんな形式でも構いません。
気軽に書ける、普段の業務の流れで自然に書けるもの、または入力できるものが良いでしょう。
例えば、「改善をする内容を紙に書いてもらい、書いたものを箱に入れてもらう」といった簡易的なもので充分です。
他には、日報や週報といったものを活用しているのであれば、最後の欄に「改善した方が良いと思うこと」みたいな項を設けて、必須事項として書いてもらうようなことでも構いません。
とにかくどんな形でも良いので、「ある一定期間を決めて改善提案をルーティン作業として提出してもらう」ということを義務化します。
実は、ここで一つ大切なことがあります。
義務化というルールを、文字通り「徹底して守る」ということです。
あなたの会社が、強い体質に生まれ変われるかの最初の関門です。
ですから、義務化を徹底するためには、スタッフから改善提案が出ていない場合は、「改善提案が出ていませんよ」と注意喚起する必要があります。
実は、この注意喚起をしっかりと発信することが非常に重要です。
なぜなら注意喚起しなければ、時々、改善提案を忘れたりさぼったりして、そのうちだんだんと書かなくなり、義務のルールが風化して、最終的にはうまく機能しなくなります。
義務化が機能しなければ、改善提案が習慣化する文化が生まれません。
改善提案の習慣化を文化にするためには、まずは強制力の発動が必要になります。
ポイントその2:改善そのものは義務化しない
次に、集まった改善提案をどのように取り扱うのかということになります。
一つひとつの改善提案を実行していけば、スゴイことになるのではないかと思われるかもしれません。
確かに机上では、スゴイことになるでしょう。
しかし、社長であるあなたがやるべきことは、「改善そのものは義務化しない」ということです。
例えば、「○○は、こういう風に改善した方が良いと思います」という意見が提出されたとしても、改善策の実行は義務化してはいけないということです。
なぜ改善策の実行を義務化してはいけないかというと、スタッフの頭の中には「提案した改善策が難しいものであったり、障壁の高いものだったりすると、実行するのが面倒くさい、大変なことはやりたくない・・・」という発想が出てきます。
そういった発想になると、スタッフは改善提案を出さなくなったり、面倒くさくないような楽なことしか書かなくなったりします。
改善提案という仕組みが形骸化すると、スタッフのモチベーションも低下してしまう恐れがあります。
つまり、改善策の実行を義務化してしまうと、本当に会社にとって必要な改善提案をしてくれなくなってしまうということです。
ですから、「改善策は別に実行しなくてもいいので、必ず改善提案は出してください」というようにするのです。
あなたは今、こう思っていませんか?
「改善提案だけをさせているのでは、何も変わらないのでは?」
「改善提案を実行するからこそ、会社が良くなるのでは?」
しかし、そのような心配は全くいりません。
なぜならば人間は、「ここはこういう風に改善した方がいいよね」といったん意識しはじめると、「それをどうしても直したい」という気持ちが働くものなのです。
そして、その改善したいという意識により100%の改善に結びつかなくても、提案してくれたうちの20%や30%が進んで改善されるようになっていきます。
改善を義務化して何も進まずに0%のままよりも、20%、30%でも改善が継続される方が明らかに会社の基盤が強くなっています。
絶対に改善そのものは義務化しないことです。
ポイントその3:改善提案を評価してはいけない
これは、提出された改善提案を「良い・悪いの評価をしてはいけない」ということです。
毎日や毎週に改善提案を出してもらっていれば、良いアイデアも悪いアイデアもたくさん混ざってきて当然です。
多くの会社では、社長や上司により、提案に対する良し悪しの評価がなされ、その結果スタッフから全く提案があがってこなくなったという話は、よく聞く話です。
ここで重要なのは、無理矢理にでもアイデアをひねり出すことであったり、それを習慣化したりすることがより良い改善策を探しだすことに繋がっていくという点です。
以上の3つのポイントを守って改善提案を繰り返してみてください。
意外なことに、改善提案の改善策を実行しなかったとしても、会社が徐々に良くなっていくのを感じとることができるはずです。
まずは社長であるあなたが、改善提案の改善策を実行してみることです。
ぜひ強い体質を作り会社を活性化させるためにも、スタッフ全員を巻き込んで改善提案に取り組んでみてください。